ガラス張りの床のある部屋で、赤ちゃんに自由に過ごさせるという実験があります。
床は一部深い穴が掘ってありますが、ガラスが張ってあるので安全です。
赤ちゃんは、最初は気にせず自由にガラス床の上を歩きます。
その後、ハイハイの経験を積んでから再度同じガラス床でハイハイしてみると、深い穴の上を避けるようになるのだそう。
ハイハイを多くするうちに、転んだり落ちたりする経験をしたために、転びそうであり落ちそうである穴を避けることを学習したということです。
これがヒヨコの場合だと、ヒヨコは初めから穴の上のガラス床を歩きません。
野生世界において、ヒヨコが一度どこかに落ちてしまったら、助からない可能性が高い。だから落ちないように生まれた時から「高いところは怖い」ということが脳にインストールされています。
この実験から、色々なことが言えると思います。
一見、初めから落ちないようになっているヒヨコの方が人間よりも優れているように見えます。
しかし見方を変えると、ヒヨコは本能で決まった範囲内でしか生きられないとも言えます。
人間は穴に落ちたり、失敗をすることもあるけれど、経験や失敗から学ぶことができます。
生まれた直後の判断力は動物の方が高いかもしれませんが、ヒトの初期能力の低さは「柔軟性」の高さにつながります。
判断力に限らず、身体能力や食べ物を食べる力など、生まれた直後に自力で生き延びる力は多くの動物の方が優っていますが、
これは焼き上がった陶器のように生まれてくるのか、加熱されたガラス細工のようにぐにゃぐにゃで生まれてくるかのような違いで、人間はガラス細工のように未熟ですが、それ故にいかようにも後で作ることができます。
また、人間が生まれた時に思いっきり未熟でいられるのは、親がしっかり見ていてくれるからだと言えます。
ヒヨコは穴に落ちても親が救い出せないのである程度成熟した脳を持っている必要がありますが、人間は子供が危ない目にあいそうでも親が守れます。
子育てにはけっこうな労力がかかるものですが、それはヒトの能力が高いことの裏返しなのかもしれません。
終わり