前回の続きです。
前回、野球がどんどんデータ化されていったということだったのですが、その結果、野球はどうなったのか?
例えば、今や球速だけでなく、スピンの量とか回転軸を解析できる野球道具もあって、各回の間にベンチで今スピンがどうなってるよ、とか、球を離す位置が前の回に比べて前になってるよ、とか全部教えてもらえるらしいんですよね。
そこでダルビッシュが言っていたのが、変化球を投げたり、球質を知ったり、というのが楽な時代になったということ。
ダル「昔は何でこの人のスライダーこんなに曲がるんだろうとか、なんで〇〇さんの真っ直ぐはこんな空振りするんだっていうのが昔はよくわからなかったけど、今は具体的に「こうだから」というのが全部データでわかるんですよ。」
おおおー!なんかワクワクすっぞー!という感じがします。
でも一方で、
2019年に引退したイチローが引退会見で語った言葉。
「2001年にアメリカに来てから2019年現在の野球は、まったく違うものになりました。頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような。(中略)頭使わないと出来ない競技なんですよ、本来は。でもそうじゃなくなってきているということに危機感を持っている人がけっこういると思うんですよ。」
どういうことか?
昨今のメジャーリーグはデータ化が進み、スイングスピード、打球角度などハイテク機器が導き出す数値で選手を評価するようになった。
守備でも野手のユニフォームのポケットには、投手と打者の相関関係からはじき出された打球方向の分布図が示されたデバイスがしのばせてあって、選手はその指示に従って守備位置を変える。
だからこんな風に、かつて存在しなかったような極端なシフトが見られるようになった。
そういう野球は単なる「コンピューターの答え合わせ」に過ぎないとして、選手たちが「頭を使わず」ビッグデータの指示するがままに動いている野球にイチローのように警鐘を鳴らす向きも、確かにある。
イチロー「最近、高校野球をよく見るんです。彼らは野球をやっているんですよ。メジャーリーグはいま、コンテストをやっているんですよ。どこまで飛ばせるか。野球とは言えないですよね。どうやって点を取るか。そういうふうにはとても見えない。高校野球にはそれが詰まっている。面白いですよ。頭使いますから。」
イチローは今、高校野球の指導にはあちこち出向いているけど、プロ野球の監督のオファーはことごとく断っている。背後には、自分の頭で考える野球を大切にしたい思いがあるのだろう。
そう考えると、データとか、AIとか、そういうことではなく、純粋な力と力のぶつかり合いが見れる高校野球、もっといえば近所の草野球にだって、プロ野球に見劣りしないおもしろさ、魅力があるんだと思う。
※コナンの作者の昔の野球漫画
結局僕らは、筋書きのないドラマが見たいんだな。
終わり